第20回日本遺伝看護学会学術大会 大会長

武田祐子(慶應義塾大学看護医療学部/大学院健康マネジメント研究科)

日本遺伝看護学会は20回目の学術大会を迎えます。ヒトゲノムの解明が進む中、その活用による医療の発展は目覚ましいものがあります。遺伝というDNA情報の伝達による生物としての現象、そこに存在する多様性、後天的に生じるゲノム変化やエピジェネティクス、環境との相互作用など、あらゆることが人々の健康や暮らしに影響していることが、より明確に説明されるようになってきました。これまでは、現象としてのみ捉えられていたことが、その機序までが解明され、診断や治療の開発にも活用されています。さらに、遺伝情報の予測性・共有性に着目した疾患の予防は、実装化に向けて保険診療の対象となってきています。遺伝情報として生涯変わらない不変性から触れられてこなかった領域に、一歩踏み込んだ医療が始まっています。これは遺伝情報に向き合うことで「多様性を力に」より豊かな生き方を可能とするパラダイムシフトであり、遺伝看護の大きな挑戦であると考えます。

 20年間の学会活動では、人々の「多様性」とその「生き方」を知るところから始まり、多くの学びを得ました。そこに「看護」がどのような役割を担っていけるのかを追究し、実践を積み上げてきました。また、2017年に遺伝看護専門看護師が誕生したことは、大きな実績でもあります。「多様性を力に」強固なものとしていくことを目指し、看護職がその役割を発揮するには、専門看護師の持つ実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究のいずれもが不可欠であると考えての選択でした。特に、遺伝看護教育の基礎教育への導入に遅れを取っているわが国の現状において、目覚ましい発展を続ける遺伝・ゲノム医療の臨床現場での教育・相談活動は、遺伝看護実践の根底を支える礎として期待されます。

 この度の20回記念大会では、看護職が役割発揮していくための基盤強化に寄与したいと考え、遺伝・ゲノム医療の動向・現状を知り、知識を蓄え、国内外の関連する遺伝医療・看護専門職、当事者の方々との連携を深める機会となることを願い企画を進めています。

 多くの皆様がご参加くださいますことを、心から願っています。