ご挨拶

 遺伝/ゲノム医療における技術革新のもと、臨床における様々な動向は社会的にも着目されることが多くなってきています。それは、周産期領域における出生前・着床前診断であったり、成人期発症疾患の発症前診断であったり、がんゲノム医療のように治療選択を目的としたゲノム情報の活用に伴う遺伝性腫瘍の診断であったりと多岐にわたります。

 日本遺伝看護学会の前身である「遺伝に関する看護を考える会」「日本遺伝看護研究会」が発足した1999年は、ヒトゲノム計画は進められてはいるものの、研究が主であり、臨床での関心は限られていたように思います。2005年9月には「日本遺伝看護学会」となり、本学会の活動も実に20年の歳月を重ねてきたことになります。その間、医療の現場では、遺伝情報の活用が進み、ゲノム医療の実装化に向けた取り組みも種々行われ、医療者として取るべき役割、法的整備や社会制度についても言及されています。

 そして2019年2月には、遺伝看護専門看護師誕生に際し「遺伝看護記念講演会」を開催いたしました。講演会では、遺伝看護の歴史と専門看護師誕生までの軌跡を振り返ると共に、遺伝看護専門看護師の活動の実際とこれからの展望と課題について語り合うことができました。
このような時期に第5代理事長を拝命し、歴代の理事長、役員、会員の皆様のご尽力により築かれてきた本学会の実績を基盤として、加速度的発展を続ける遺伝/ゲノム医療に山積する課題に取り組んでいく責務を感じております。

 中込さと子前理事長のリーダーシップのもと、遺伝関連学会、看護系学会、支援グループ等との交流・協力・融和を図り、様々なプロジェクト・研究・相互交流教育研修制度が実現し、遺伝看護研究ならびに看護職の臨床能力向上にむけた取り組みを推進してきました。看護基礎教育の充実や、社会的な基盤整備についても地道な活動を重ねてきました。これらの取り組み、活動を着実に引き継いでいきたいと思います。

 今後は、医療の動向と課題を的確にとらえ、看護としての主張を発信しつつ、さらなる学会活動の充実と発展を目指し、会員の皆様と共に力を尽くしていきたいと考えています。会員の皆様には更なるご協力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

日本遺伝看護学会
理事長 武田祐子